トランス脂肪酸という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
近年、欧米諸国を中心に「からだに害のある油」として世界的に話題になっています。
しかし、このトランス脂肪酸はマーガリンを代表として、様々な食品に含まれていますので注意が必要です。
見ていきましょう
トランス脂肪酸とは?
まずはトランス脂肪酸がどのような油であるのかを説明していきます。
油には動物性の食品に含まれる「飽和脂肪酸」と、植物から抽出した「不飽和脂肪酸」という油があります。
私たちが料理に「油」として使うのは菜種油(キャノーラ油)、コーン油、オリーブオイル、ごま油など植物から抽出して作られた植物油です。
昔は植物から油を抽出する際は、機械などを使って植物に圧力をかけて油を絞り出す「圧搾法」という原始的な方法が一般的でしたが、この圧搾法では時間と労力がかかるうえに、植物から20~30%の油しか搾り出せないためロスが多くなってしまいます。
さらに抽出する際に加熱をしないためすぐに変質(酸化等など)してしまいます。
ただ、言うまでもなく最も栄養が含まれている油の搾り方がこの方法です。
上記の理由で、今では一般的に販売されているほとんどの油が「溶剤抽出法」という方法で油が生産されるようになりました。
これは油の原材料に、劇薬である「ノルマルヘキサン」という化学溶剤を入れてドロドロにし、加熱をすることで原料に含まれる油を溶け出させ、それを高圧・高熱にかけて溶剤だけを蒸発させて作る方法です。
この、化学の実験のようにして絞られた油は、加熱をしているので変質はしづらいですが、精製する際に、原料に含まれる不飽和脂肪酸の分子構造が変化してトランス脂肪酸になります。
さらにその油に酸化防止剤など油が変質しないように添加物が加えられ、サラダ油などとして売られます。
プラスチックと同じ構造のマーガリン
「動物性脂肪のバターよりも植物からできたマーガリンのほうがからだに良い」と思っている人達がいますが、マーガリンは、「トランス脂肪酸の代表格」です。
まずマーガリンのおかしなところは固体であることです。
動物性脂肪である飽和脂肪酸は常温では固体になる性質があります。
焼き肉を食べ終わった後にしばらくして、つけダレの上に白く固まった油が浮いているのを見たことがあると思いますが、あれは肉を焼いた時に溶けだした(動物性脂肪)飽和脂肪酸がつけダレに付いて再び凝固したものです。
それに対して植物に多く含まれる不飽和脂肪酸は常温下で液体となる性質があるので、植物油から作られているマーガリンが固まっているのは通常では考えられないのです。
マーガリンがどのように作られているかというと、植物油(不飽和脂肪酸)を加熱して水分を蒸発させて脂肪酸を凝固させ、そこに水素を添加して作られます。
この植物油も、ほとんどのものが先ほどの劇薬の化学溶剤で抽出して作られた油を使っています。
水素を添加する理由は、不飽和脂肪酸に水素を添加すると化学構造が変化し、飽和脂肪酸に変化するからです。
このように自然の油とはかけ離れ、人工的に作られたのがマーガリンです。
加工する理由はもちろん保存が長くできるからですが、構造式がプラスチックとほとんど変わらないといわれています。
アメリカの自然派運動家であるフレッド・ロウ氏による「マーガリン大実験」
という話があり、マーガリンの怖さを証明する為に、マーガリンを日の当たる窓際に2年半放置しました。
結果そのマーガリンは2年半経っても酸化せず、カビも生えず、虫すら寄ってこなかったそうです。
「ショートニング」や、マーガリンの一種である「ファットスプレッド」も市販の加工されたスナック菓子やスイーツ、ファストフード店の揚げ物に使われており、マーガリンと同じトランス脂肪酸です。
コンビニの菓子パンやお菓子売り場に置いてある商品パッケージの裏を見てもらったらしっかりと明記されているのでぜひ確認してみて下さい。
トランス脂肪酸の使われている商品の多さに驚きますよ。
トランス脂肪酸の危険性
もうここまで話した時点でこれからマーガリンを積極的に摂取しようという人はいないかもしれませんが、トランス脂肪酸の危険性についても書きたいと思います。
この人工的に作られたトランス脂肪酸は、体内に入っても代謝することができません。
動物は自然の物しかちゃんと代謝できないので、それは人間も同じです。
それでも、「トランス脂肪酸は体内に取り込まれるとからだの一部として細胞膜を形成します。」
そこで細胞内の生化学構造(生物体の構造)が狂ってしまい、ホルモン異常、肝臓障害、糖尿病、ガンなど様々な病気になるリスクを高めます。
ほかにも善玉コレステロールを減らして悪玉コレステロールを増やたり、高血圧、心臓疾患などの健康被害が報告されており、アメリカの医学研究所のレポートは、
「トランス脂肪酸には安全摂取量はない」
と報告しています。
つまり少しも摂取してはいけないということです。
アメリカのニューヨーク州ではトランス脂肪酸を使った食品は禁止されており、他の欧米諸国でもトランス脂肪酸の使用量に上限値を定め、その値を超えたものの販売は禁止されています。
私はカナダに住んでいましたが、その時にも「NO TRANS FAT」と書いてある製品をよく見かけました。
残念ながら日本ではまだまだトランス脂肪酸の認知度自体が低く、規制もされておらず「野放し」状態です。
そのため、保存性が高く、大量生産して安価で売ることのできるトランス脂肪酸は日本の食品業界では重宝されており、日本の多くの加工食品に使用されています。
トランス脂肪酸の使われている食品
トランス脂肪酸は海外ではかなり危険視されている油ですが、日本では規制すらされていないのが現状です。
それではどのような食品に含まれているのか紹介していきたいと思います。
まず調理の際に使う油ですが、スーパーやコンビニなどで売られているサラダ油などの一般的な調味油はトランス脂肪酸である可能性が高いです。
サラダ油は菜種、綿実、大豆、ごま、ひまわり、とうもろこしなどの油を混合し、加熱・抽出処理して作られますが、精製時(溶剤抽出法が一般的なため)に油の分子構造がトランス脂肪酸に変化してしまうものが多いからです。
さらに、安価な油の場合、原料となる植物が遺伝子組み換えによるものや、農薬や化学肥料を使用して栽培されたものがほとんどなので、二重三重と危険のリスクが高まります。
加工食品ではパッケージの裏に「植物油脂または植物性油脂」と書いてあったらそれはトランス脂肪酸である可能性が高いです。
これは現代のほとんどの加工食品に含まれているので、意識しなければ避けるのは不可能で、いかにトランス脂肪酸が日常に溶け込んでいるかがわかります。
まとめ
- 化学溶剤によって抽出(溶剤抽出法)され、高圧・高熱によって精製された植物油(不飽和脂肪酸)は、分子構造が変化してトランス脂肪酸となります。
- その油に水素を添加して人工的に飽和脂肪酸(常温で固体になる)にしたものがマーガリンで、様々な病気になるリスクがあります。
- トランス脂肪酸は日常ではサラダ油などの調理用油や、多くの加工食品に含まれる「植物油脂(植物性油脂)」として使われています。
私が北米で暮らしている時には、日常生活でトランス脂肪酸について企業の注意喚起や人々の会話などで見聞きする機会がありましたが、日本に帰ってきてからは自然食品のお店などに行かない限りほとんど見聞きする機会はありません。
日本ではとても多くの食品にトランス脂肪酸が使われているので問題提起する人が出てきても企業の力で潰されるだけだと思うので、海外諸国からプレッシャーをかけられない限りはなかなか変わらないでしょう。
私たち1人1人が知識を持ち、トランス脂肪酸の含まれていない食品を買わないようにして少しづつ変えていきましょう!!
あなたの健康を願っています。