いきなりですが、「増粘多糖類」という言葉を聞いたことがありますか?
食に対して特に意識せずに生活をしていれば、ますこの単語を聞くことは無いかと思います。
食品のパッケージ裏の原材料の表を良く見る人は、見覚えがあるかもしれません。
今回は増粘多糖類についての基礎知識と、代表的な増粘多糖類について書いていきたいと思います。
増粘多糖類とは?
増粘多糖類は樹皮、海藻、豆、細菌、酵母などから抽出された粘性のある多糖類の事を言います。
多糖類とは、党委が多数鎖のように結合している物質の事をいいます。
身近なものでは、穀物やイモ類に含まれている「デンプン」や、果物や野菜に多く含まれている「ペクチン」などです。
食品に粘りやトロミを付けたり、ゲル状(液体がゼリー状に固まる現象)に固めたりするために使われます。
ですので、主な用途としては、果実飲料、乳飲料、スープ、ドレッシング・タレ類、ソース、ゼリー、デザート食品など、とても多くの食品に使われています。
使う目的によって名前がかわるというとてもややこしいもので、粘りやトロミを主に付ける場合には、「糊料、増粘剤(増粘安定剤)」、食品をゲル状にする目的で使われる場合には、「ゲル化剤」、粘りを強くして、さらに食品成分を均一にし、安定させる目的の場合には「安定剤」と表示されます。
糊料と増粘剤に関しては、合成添加物の場合を「糊料」、天然の添加物の場合には「増粘剤」、と用途名が表示される傾向があります。
増粘多糖類には非常に多くの種類があり、以下がその一覧になります。
- アウレオバシジウム培養液
- アグロバクテリウムスクシノグリカン
- アマシードガム
- アラビノガラクタン
- アラビアガム
- アルギン酸
- アロエベラ抽出物
- ウェランガム
- エレミ樹脂
- オリゴグルコサミン
- カシアガム
- ガティガム
- カードラン
- カラギーナン
- カラヤガム
- カロブビーンガム
- キサンタンガム
- キダチアロエ抽出物
- キチン
- キトサン
- グァーガム
- グァーガム酵素分解物
- グルコサミン
- 酵母細胞壁
- サイリウムシードガム
- サバクヨモギシードガム
- ジェランガム
- スクレロガム
- セスバニアガム
- タマリンドシードガム
- タラガム
- ダンマル樹脂
- デキストラン
- トラガントガム
- トロロアオイ
- 納豆菌ガム
- 微小繊維状セルロース
- ファーセレラン
- フクロノリ抽出物
- プルラン
- ペクチン
- マクロホモプシスガム
- モモ樹脂
- ラムザンガム
- レバン
これらの中の1品目でも添加されれば、物質名が表示されます。
例えば、アラビアガムが添加された場合は、「増粘安定剤(アラビアガム)」と表示されます。
しかし、アラビアガムや、グァーガムなど2品目以上添加した場合は「増粘多糖類」という略称表示でよくなっています。
そのため、他の添加物でもそうですが、具体的にどの添加物が使われているかは、パッケージを見ただけでは、消費者は知ることができないのです。
たくさん種類のある増粘多糖類の中にも、いくつか危険性のある疑いのあるものがあるのですが、それらが使われていても、隠さずに表示しているメーカーの食品でない限り、消費者には見分けることができないのです。
以下では様々な増粘多糖類の添加物を紹介しているので、危険性の高いものを覚えていただき、参考にしていただけたらと思います。
アラビアガム
アラビアガムは、マメ科アラビアゴムノキまたは同じ種類の植物の分泌液を乾燥させた、「増粘多糖類」の 1種です。
急性毒性は弱いですが、妊娠ウサギに体重1㎏あたり、0.8gのアラビアガムを与えた実験では、ほとんどのウサギが食欲不振、出血性の下痢、尿失禁を起こして死んでしまいました。
人間の場合には、アラビアガムを吸入して、喘息や鼻炎を起こすとされています。
アラビアガムが添加された錠剤を飲んで、発熱、関節痛、発疹等を起こす人もいるようです。
アルギン酸ナトリウム
アルギン酸は元々海藻などに含まれている粘性のある物質で、それとナトリウムを結合させたものが、アルギン酸ナトリウムです。
ソーセージやアイスクリーム、ジャムなどにトロミや粘性を持たせる目的、ゼリーにはゲル化を起こすために使われます。
ラットにアルギン酸ナトリウムを生まれてから死ぬまで与え続けた実験では、体重、食欲、解剖後の観察で異常はありませんでした。
アルギン酸ナトリウムを、5%および15%エサに加えて、1年間ビーグル犬に食べさせた実験では、体重、血液、尿、血糖、行動一般症状などに異常は見られませんでした。
健康な大人に1日8gを1週間口から与えた実験でも、毒性は全く観察されませんでした。
アルギン酸は元々食品に含まれている成分なので、これにナトリウムを加えても、毒性はないようです。
ただ、ナトリウム(塩の成分)をとることになるので、高血圧の人は注意が必要です。
カゼイン
カゼインは牛乳に含まれている成分ですが、カルシウムやリン酸カルシウムと結合しています。
牛乳の色が白いのはこの成分によるものです。
カゼインは糊料としても使われていて、魚肉練り製品、アイスクリームやゼリーなどに使われます。
自然の食品の成分なので安全性は高いといわれています。
カゼインナトリウム
カゼインにナトリウムを結合させたもので、水に溶けやすく、ただのカゼインよりも利用範囲が広くなっています。
ハム、ウィンナー、魚肉練り製品、アイスクリーム、ゼリー、麺類などの多くの製品に使われています。
安全性が高いといわれているカゼインにナトリウムが結合しただけなので安全性が高いと思われますが、動物に体重1㎏あたり0.4~0.5gを5日間連続で口から与えると、中毒を起こしてその半数が死んでしまいます。
この実験結果からみても安全性が高いとはいえず、ナトリウムが結合することで、毒性が高まってしまったようです。
カラギーナン
カラギーナンはパッケージをよくチェックしている人なら見たことある名前かもしれません。
紅藻類のスギノリ科、ミリン科、イバラノリ科などの海藻類を乾燥してえられた「増粘多糖類」です。
主成分はガラクトースとアンヒドロガラクトースなどからなる多糖類です。
多くの食品に使われていて、しゃぶしゃぶのたれやドレッシング、ゼリー、ジャム、ソース、スープ、豆乳、乳飲料、果実飲料、デザート食品などに使われます。
急性毒性(一度に多量に摂取した場合の毒性)は弱いですが、ラットにカラギーナンを15%、25%含むエサを50日間食べさせた実験で、4日目から下痢が始まり、特に25%群は激しく血便が見られました。
8日目以降は背中の毛が抜け始め、25%群とメスが酷く抜けたようです。
その一方で、ラットに4%のカラギーナンを含むエサを6ヶ月間食べさせた実験では、異状は見られなかったようです。
大量にとってしまうと障害が起こってしまいますが、少ないと問題は起こらないようです。
しかし、天然添加物は多く添加される場合が多いので、もしカラギーナンの添加された食品を食べて不調が出たら、注意が必要です。
サルでの実験も行われていて、アカゲザルに体重1㎏あたり50㎎、200㎎、500㎎を1週間に6日、5年の間強制的に口から与え、それ以降の2年半はエサに混ぜて与えた実験では、軟便、慢性的な腸の不調、食欲不振、衰弱が見られました。カラギーナンを与える量が多くなるにしたがって便は軟らかくなり、同じように血便も増加しました。
ラットに発ガン物質を与えて、さらにカラギーナンを15%含むエサを与えた実験では、結腸腫瘍の発生率が高くなりました。
また、発ガン物質を与えずに、カラギーナンを含むエサだけを与えた場合は、ラット1匹に結腸腺腫(ポリープ)が見られました。
他にも、ニワトリの受精卵にカラギーナンを0.1%含む水溶液を0.1mg投与した実験では、胚(生物の初期段階の個体)の死亡率が高くなり、ヒナに脳露出、異常なくちばし、無眼症などが見られ、生まれたヒナのほとんどは4日目で死亡しました。
これら多くの動物実験を見る限り、腸への影響が強いことがわかるので、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を持つ人は特に気を付けた方がいいのがわかります。
カルボキシメチルセルロースナトリウム
食物繊維の主成分であるセルロースを原料として、水酸化ナトリウムなどを反応させて化学合成されます。
名前が長いため、「CMC-Na」または「CMC」と表記されることが多いです。
水に溶けやすく、粘性、安定性、保護コロイド性(細かな粒子を安定的に分散させる性質)などの特性があります。
アイスクリーム、シャーベット、ケチャップ、ソース、クリーム、ジャム、ピーナッツバター、佃煮、麺類などに使われます。
急性毒性はほとんどなく、ラットにCMC5%を含むエサを8ヶ月間食べさせた実験では、成長、臓器重量、腫瘍組織に病的な変化は見られませんでした。
また、ラットに20%という大量に含まれたエサを2ヶ月間食べさせた実験では、わずかに成長が悪くなって、便が軟らかくなりました。
現実的にこのように大量に摂取することは無いので、あまり心配する必要は無いと思います。
カルボキシメチルセルロースカルシウム
食物繊維の成分である、セルロースに水酸化ナトリウムや炭酸カルシウムなどを化学反応させて合成します。
こちらも名前が長いので、「CMC-Ca」と表記されることが多いです。
固形スープや固形調味料、顆粒だしなどを溶けやすくするために使われます。
毒性は上記のカルボキシメチルセルロースナトリウムと同じぐらいです。
キサンタンガム
キサンタンガムは、細菌のキサントモナス・キャンペストリスの培養液から分離してえられる、「増粘多糖類」の一種です。
成分は、グルコース、マンノース、グルクロン酸などからなります。
ドレッシングやソース類、漬物、佃煮、冷凍・レトルト食品、プリンやスポンジケーキなどに使われます。
犬に1日に体重1㎏あたり0.25g、0.5gのキサンタンガムをエサに混ぜて与えた実験では、0.5gの群では便が軟らかくなって成長がやや悪くなり、コレステロール値が低くなりました。
キサンタンガムは消化されにくいので、便が軟らかくなり、コレステロールを吸収して排出したため、コレステロール値が減ったと思われます。
健康な5人の男性に、10.4~12.9gのキサンタンガムを1日3回に分けて23日間与えられましたが、血液、尿、免疫、善玉コレステロールなどに影響はありませんでした。
さらに、総コレステロールが10%減っていました。
他にも、人間がキサンタンガムを1日に10~13gとっても影響はなかったようです。
キチン
エビやカニなどの甲羅から抽出したもので、増粘安定剤として使われています。
実験データがありませんが、安全性に問題はないと考えられています。
キトサン
キチンを水酸化ナトリウム溶液で処理したもので、軟骨成分のグルコサミンからなります。
こちらも実験データはありませんが、安全性は高いと考えられています。
グァーガム
マメ科グァーの種子を粉砕してえられるか、お湯で抽出してえられた、ガラクトマンナンからなる「増粘多糖類」一種です。
冷水に溶けやすく、粘性が高いのが特徴です。
ドレッシング、ソース、ケチャップ、こんにゃく、食肉加工品、ゼリーやプリン、アイスクリーム、和菓子などに使われます。
グァーガムを含んだダイエット薬を飲んで、食道がふさがってしまったケースがいくつも報告されており、また、カーペット工場の従業員が、グァーガムが原因で喘息を起こしたという報告があります。
ラットにグァーガムを1~15%含んだエサを91日間食べさせた実験では、体重の増え方が悪くなり、腎臓の重さ、血糖値がやや低くなりました。
妊娠マウスに体重1㎏あたり0.8gを与えた実験では、29匹中8匹が死亡しました。
これらの結果からみると、安全だとは言い難いです。
セルロース
セルロースは植物の細胞壁を構成する成分で、ブドウ糖(グルコース)が鎖状に多く結合したものです。
食物繊維の大半がこのセルロースで、地球上で一番多い炭水化物です。
添加物としてのセルロースは、海藻セルロース(海藻を乾燥させてから粉砕してえられたもの)、サツマイモセルロース(サツマイモの根茎からえられたもの)、トウモロコシセルロース(トウモロコシの種皮からえられたもの)などがあります。
安全性はとても高いです。
大豆多糖類
大豆からえられた多糖類で、トロミや粘りを出すために使われます。
安全性は高いですが、大豆アレルギーの人は注意が必要です。
タマリンドシードガム
マメ科のタマリンドの種子からお湯またはアルカリ性の水溶液で抽出してえられた「増粘多糖類」の一種です。
「タマリンドガム」ともいい、タマリンドは中央アフリカに生える植物で、その実、さやは食用に利用されています。
私はタイに旅行に行った時に食べましたが、ほのかに甘酸っぱくて、地味な見た目からは想像できないほど美味しくてビックリしました。
急性毒性は弱いですが、マウスに5%のタマリンドシードガムを含むエサを78週間(約1年と8ヶ月)与えた実験では、体重の増え方が悪くなり、肝臓が通常よりも重くなったようです。
それでも、病理学的な変化は無く、ガンも発生しませんでした。
トラガントガム
トラガントガムはマメ科のトラガントという植物の分泌液を乾燥してえられた「増粘多糖」の一種です。
ゼリー菓子、ソース、ドレッシングなどに使われています。
トラントガムには発ガン性の疑いがあるデータがあり、ラットにトラガントガム1.25%および5%含むエサを96週間(約2年間)食べさせた実験があります。
結果は、メスの体重がやや少なくなり、前胃に乳頭腫というガンの発生がみられました。
トラガントガムを与えた量が多くなるにしたがってガンの発生率も高くなるという、用量依存性は無かったため発ガン性は認められませんでしたが、安全とは言い難いと思います。
他にもトラントガムには、重い症状を引き起こすアレルゲンになりうるという報告もあるそうです。
ペクチン
柑橘類やリンゴ、サトウダイコンの果皮などに多く含まれていて、これらから水で抽出してえられます。
主成分はメチル化ポリガラクチュロン酸という多糖類です。
ジャム、アイスクリーム、ゼリー、ケーキ、チョコレート、ジュースなどにトロミを付けるために添加されます。
食品に含まれている成分なので、安全性は高く、毒性はほとんどありません。
マウスの3世代にわたってペクチン2%および5%を含むエサを与えた実験では、死亡率、体重、食欲、繁殖力に異常は見られず、病変も観察されませんでした。
ラットに90日間、5%、10%という大量のペクチンを含むエサを与えた実験でも、一般状態、行動、生存率に悪影響はありませんでした。
ただ、成長率がわずかに低下したようです。
他にも、ラットにペクチン10%を含むエサを2年間与えた実験では、体重が少なくなり、精巣重量が大きくなりました。
ペクチンは栄養になりにくいので、毎日多くの量を摂取し続けると体重が減ってしまうみたいです。
メチルセルロース
食物繊維の成分であるセルロース(パルプ)を水酸化ナトリウム溶液などで処理して、メチルセルロースは合成されます。
アイスクリーム、シャーベット、ドレッシング、麺類、みかんの缶詰などに使用されます。
体内で消化されずに、数倍の水分を取り込む作用があるため、アメリカではダイエット用のクラッカーやウエハースなどに使われているそうです。
毒性はほとんどなく、イヌに一日当たり2~100gのメチルセルロースを1ヶ月間与えた実験では、副作用は認められませんでした。
人間に6gのメチルセルロースを240日間与えた実験でも、副作用はありませんでした。
まとめ
増粘多糖類は全体的にみると、危険性の高い添加物は多くないように思います。
ただ、アラビアガム、カラギーナン、トラガントガムは危険性のある疑いがあるので、避けた方がよさそうです。
特にカラギーナンは多くの食品に使われているので、カラギーナンの使われている食品は気を付けましょう。
腸に悪影響を与える可能性が高いので、潰瘍性大腸炎を持病で持っている私は特に気を付けています。
腸疾患を患っていたり、お腹の弱い人も気を付けましょう。
あなたの健康を願っています。
引用元
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