こちらの記事の続きで、カナダでの生活について書いています。
私は仕事も必ずローカルの会社に入ると決めていて、バンクーバーでは鉄筋工(reinforcement works)の仕事をしていました。
今回は私が見たり聞いたりした、カナダの労働環境を書きたいと思います。
やっと見つけた仕事
まずバンクーバーに着いてからどのように仕事を探せばよいのかわからなかったので、とりあえず最初に住んでたドミトリーの住人から情報収集をし、カナダの求人用のサイトや掲示板をいくつか教えてもらいました。
インターネットの掲示板でCraigslistというものがあり、北米では多くの人が利用しています。
ここでは求人や、色々なものの売買、闇の仕事まで、ありとあらゆることのやりとりがされています。
これをうまく使いこなすのがここでのサバイバルの仕方だと教わりました。
実はCraigslistはほとんどの日本人の人は使いませんが、外国人の人を雇いたい人や、日本在住の外国人同士の交流の場として日本でも使われています。
こちらは東京となっていますが、他の県でも検索できます。
色々なイベントの募集なども行っているので、外国人の人と交流したい人はぜひのぞいてみてください。
そして2週間近くひたすらメッセージに履歴書を添付してオンラインの募集にメールを送りまくりました。
たぶん50件近くは送りましたが、返信があったのは10件いかないぐらいでした。
日本だったら面接前のやりとりではほぼ100%返信が来るので不思議に思っていましたが、のちに他の会社の人事で働いてる人に話を聞いたら、メールは見てる時と見てないときがあるから、たまたまチェックした時に見たメールに返信すると言っていました笑
全部しっかりチェックしてるところもあると思いますが、チェックしてないところの方が多いのかと思います。
最初は私がカナダ人ではないからあまり返信が来なかったのかと思っていたら、カナディアンの人でも応募先から返信が来ることが少ないといっていたので、残念ながら私の考えは合ってるかと思います。
私は工事現場の仕事をちょうどしたいと思っていて、主に建築系の会社にメールを送っていたのですが、ある一つの会社から返信がきて、人事部のJonが私に連絡をくれました。
仕事のことよりも履歴書にある私の格闘技歴に興味をもって返信してきました。
何通かやり取りをしていて、私がFKPMMA(私が通っていた格闘技のジム)に通ってることを伝えたら、彼もFKPの会員らしく、完全に意気投合し、そのまま採用されました笑
面接も何もなしに、「次の週の月曜日から道具を買って指定した場所に来てくれ」と伝えられました。
そのまま近くの現場用の道具が売っているお店を調べて、ブツを買いに行きました。
メット、ワークブーツ、レインコート、保護メガネ、軍手を買い、来る日に備えました。
この時はまだ私は雨の多いバンクーバーでの屋外労働がいかに大変か知りませんでした・・・
仕事の始まり
仕事初日、現場についてみると、複合施設を建てているもの凄く大きな現場でした。
言葉もほとんど話せないし、海外での初仕事でもの凄く不安でしたが、同時にこれから起こる出来事についてワクワクしていました。
建物の奥に進んで行くと、各職人用のプレハブ小屋があり、「そこに到着したら電話するように」とあらかじめ教えてもらっていた電話番号に電話したら、安全担管理者(Safety officer)のJuliaという女性が電話しながらでてきました。
彼女に付いて行って少し離れたところにあるプレハブに入り、そこで、その現場での個人登録と簡単なテストをすることになりました。
その空間には私とJuliaともう一人現場監督の人がいました。
日本でも少し現場で働いたことがあったので、ここまでの流れはなんとなく予想がついていました。
簡単なテストというのは、最初に映像を見て記憶し、後から問題の書かれた用紙に記入するという流れです。
まず映像を見てる時に見たこともない単語ばかりでてきて、テスト用紙を見ても、建築用語ばかりの難しい単語ばかりで、まず問題の意味すらわかりませんでした・・・
心の中で「ヤバイヤバイこれ働く前にクビになるパターンだ・・・」と焦っていると、Juliaと現場監督が身振り手振りでわかりやすく問題の内容を伝えてくれ、なんとか終わらせることができました。
とりあえず形だけっぽい感じだったのでよかったです笑
その後会社の作業の時に着るシャツをもらい、自分たちの会社のプレハブにJuliaと向かいました。
初仕事
Juliaに連れられて緊張しながらプレハブの中に入ると誰もいませんでした。
私がテストでもたもたしているうちにとっくに仕事の始まる時間になっていて、みんなもう働いていました。
中で契約書や銀行口座を記入する用紙など、色々な用紙をもらい、ついに働く時間がきました。
とても大きな現場なので、たくさんの人がその現場で働いていますが、私が最初にする仕事は、地面で鉄筋の柱を作ることでした。
家を作る工程を簡単に説明すると、
基礎工事(地面を平らにする、杭を地中に埋める、作業用足場を作ったりなど)➡壁・床・柱の工事➡内装や中に水道や電気などの設置➡細かいところを整えて完成
という流れです。
私たちの仕事は、床の強度を高めるために、骨組みになる鉄筋をこのように組むのと、
最初の写真のように、柱の元となる鉄筋カゴを作り、それを柱となる場所に組み込むことです。
人間の身体に例えると骨を作っているというイメージです。
床の骨組みを作り、鉄筋カゴを設置する熟練したグループと、ひたすら鉄筋カゴを作る2つのグループに分かれて作業をします。
新人ははもちろん鉄筋カゴを作る仕事をやることになります。
ひたすら重い鉄の棒を運んで、それらを針金とペンチを使い、図面を読んで指示を出す人に従って組み立てていきます。
あとで調べたところ、日本にはハッカーという鉄筋工専門の道具があって、ペンチを使ってるカナダと比べて「さすが日本」とひそかに思ってました。
鉄筋カゴも2つのグループに分かれて作っており、柱となる大きな柱状のカゴと、それらを接続させる四角いカゴ(X Cageと呼んでいました)作るグループです。
私はしばらくは小さなカゴを作ることになりました。
周りを見渡してみると、会社から支給されたシャツは自分のだけ黄色くて、他の人はみな青色で、黄色のシャツは新人用のシャツでした。
X Cageを作るグループのボスと、職人の人たちに挨拶し、作業に取り掛かりました。
腰に針金を丸めたものを取り付けて、それを手で引っ張り、もう片方の手で持っているペンチを使ってその針金をひたすら鉄筋に結んでいきます。
針金の結び方にも何種類かあり、最初はペンチの使い方と結び方を覚えるのが大変でした。
初の人種差別
同僚の人たちのほとんどが白人の人で、あとは何人かのネイティブカナディアンの人たちで職場は構成されていて、アジア人は私一人でした。
日本でもあまり外国人の職人の人をみないように、カナダでも珍しいようでした。
特に日本人で、もともと職人をやってなかった人が外国行ってわざわざ職人やる人は少ないでしょう笑
来て最初の頃は白人の人たちに色々な差別にあいました。
例えば、「お前の名前はおぼえ辛いからこれからAlexって呼ぶな」という人がいたり、私の事を「津波(Tsunami)」と呼ぶ人もいました。
もし私が福島など、震災の被害を受けた東北から来た人間だったらかなりショックを受けていたと思います。
名前を呼ばれるたびに思い出すのですから。
他にも、「お前の靴綺麗だから現場に馴染むように汚してやるよ」と言って足を踏まれたり(安全靴なので痛くはありません)
、小突かれたりはよくしました。
私も鈍感な方ですが、そこまでされるとさすがに気付きました笑
「これが白人の世界か・・・」とこの時に感じました。
しかし、かばってくれる人達もいて、例えば「Alexと呼ばれた時には、コイツにはしっかり○○って名前があるからちゃんと名前で呼べよ!」と言ってくれたり、何か差別的な事を言われたときは「差別的な事を言うな!」と言ってくれたりしました。
状況的には私が一緒に働いてない方のグループの人たちが大声で何か言ってきて、一緒に働いて私のことを知っている人たちがそれに言い返してくれるという感じでした。
仲良くなった人達がかばってくれた時は、なんとも言えない嬉しさがありましたね。
格闘技をしっかりやっていたおかげで、メンタル的には全く動じませんでした。
「これが差別か!いつかネタになるな」ぐらいにしか考えてませんでした。
一方で、ネイティブの人たちは差別などもちろんしません。
彼らも子供の頃からされてきたからです。
ネイティブの人たちは本当にかっこよかったです。
自分たちの文化に関連するタトゥーを身体に彫り、自分たちがネイティブだということに誇りをもって生きていました。
褐色の肌に刻まれた部族の模様に、肉体労働で磨かれた身体、それに落ち着いた雰囲気がとてもカッコよかったです。
こういう日本じゃ出会えない人たちに会ってみたかったので、来てよかったなーと心から思いました。
ランチタイム
初日はランチタイムがどんな感じなのかさっぱりわからなかったので、何も持って行きませんでした。
そしたr、私が何も持ってきていないことに気付いた人が食べ物をくれました。
職場で一番感動したのは実はランチタイムで、半分近い人が手作りでお弁当をもってきていました。
日本の現場で働いてる時は、弁当をもってきてる人は結婚して奥さんが作ってくれている人で、独身の人のほとんどはどこかに食べに行くか、コンビニ弁当で、自分で弁当を作って持ってきてる人はほとんどいませんでした。
何人かになんで弁当作ってくるのか聞いたら、「安いし、こっちの方が健康的だろ?」といわれ、偏見に聞こえると思いますが、肉体労働者にまで健康意識が及んでいることがスゲーなと思いましたね。
私も毎日弁当を持参していましたが、私はお米を使って調理したものを主に食べていました。
手作り弁当を持参している人のほとんどが、サンドイッチやパスタで、ここでも食文化の違いを感じてました。
たまにお互いのおかずを交換したりして、楽しい時間を過ごしていました。
この時間は普段別のグループで仕事している人たちとも話せる貴重な時間で、みんな仲良くしていて、食べ物をシェアしあったり、家庭の事象でお金がどうしてもなく、ランチが食べられない人を助けたりしていました。
英語で話していると年齢を気にしないで話すことができて、色々な人と仲良くなることができるのが素敵でした。
労働環境
カナダで生活していて、「日本だったらクビになるだろ」というシチュエーションに何度も出会いました。
日本の工事現場だと仕事中にタバコを吸うなど言語道断ですが、皆普通に仕事をしながら吸ってました笑
飲み物を飲むのはわかりますが、お菓子やドーナッツなどの軽食も普通に食べてました。
ヘルメットの中に食べ物を隠し、隙を見て食べてました。
現場の支持者が注意するかと思ったら、その人も同じことをやっているのでどうしようもありません。
あとは大声で話したり、歌ったり、叫んだりしてました。
衝撃を受けたのが、重機を運転出来る人が、運転中に重機で遊んだりしてました。
クラクションでリズムを刻んだり、ブルドーザーの前面のブレードを上下に動かしながら走ったりしていました。
私も働きながら色々な話をしてたくさんカナダについて教えてもらったり、日本の事を話したりしました。
これは私が働いてた現場での話ですが、他の職種も日本のように厳しくありません。
私が見てきたものを話すと、例えばスーパーや薬局などでレジ打ちしている人は、横にもう一人いたら、その人と話しながらレジ打ちをしたり、話がめちゃくちゃ盛り上がっている時にレジに並んだりすると、その話が終わるまで待たされるか、「なんでこのタイミングで並ぶんだよ」的な顔でいやいやレジ打ちにとりかかったりする場面に何度も遭遇しました。
他にもスタバのフラペチーノを飲みながらレジ打ちをしたり、誰もレジに並んで無いときには堂々とご飯を食べてる人も見ました。
服を売っているお店では、服を置いてるディスプレイに座り込んで話してる人を見ました。
オフィスワークでは、オフィスで働いてる何人かの友達に話を聞いたところ、定期的に上司が部下を連れてランチに行きお酒まで飲んだり、会社によってはビールサーバーが置いてあって自由にビールが飲めるところがありました。
ビールサーバーは友達に会社見学をさせてもらって自分の目で見て驚きました。
そんな感じでみんな働いてるので、日本と比べると圧倒的に働いてる人たちのストレスレベルが低いのがわかります。
やることさえやってれば細かいところは気にしないという感じでした。
もちろん厳しい会社もあると思いますが、そもそもの仕事に対する考え方が日本とは違うのだと思います。
それに何が悔しいって、労働時間はかなり厳しく守られてて、ほとんどの会社が8時間で上がれますし、残業になると、時給でいうと基本の時給+25%加算された残業代になるので、会社もあまり残業をさせません。
そこで何が起こるかというと、帰宅ラッシュの始まりが15~19時頃となるのです笑
7時から働いてる人たちは15時に帰れますし、8時からの人は16時です。
私は7時から働いていたので残業がなければ15時には帰れて、残業があっても16時には帰れてました。
北米は車社会なので、15時の道路が車で埋め尽くされていたり、電車が混むのを見て、最初の頃は目を疑いました。
日本だったら15~17時頃はどこも混んでませんからね。
19時頃が帰宅ラッシュじゃないでしょうか?
それでいて基本給も日本より高いので、生活するのに十分なお金がもらえます。
ただ、早く帰れるので遊び好きな人は仕事の後に遊びに行けます。
そして給料日前に金欠になります。
給料日は、ほとんどの会社は日本と違って2週間に一回です。
1ヶ月に2度給料をもらえるのは気持ち的に得した気分で、私は貧乏生活に慣れていたので、月の最初にもらった給料を生活費に回して、2回目の給料は貯蓄に回していました。
よくこれで国が成り立ってるなと毎日感じてました。
仕事を手に入れてお金も入るようになり、生活も快適になっていきました。
次回は住んでいた家について書きたいと思います。
あなたの健康を願っています。