食品添加物の着色料には大きく分けて、「合成着色料」と「天然着色料」があります。
天然着色料は合成着色料に比べたら比較的安全だと言われています。
危険だと言われている合成着色料については別の記事で書いているのでこちらもぜひ読んでみてください。
今回は天然着色料について、シンプルにまとめて書いていきたいと思います。
天然着色料は安全?
合成添加物には発ガン性の疑いのあるものが多いですが、天然の物質から抽出されたものは果たして安全なのでしょうか?
実は天然の着色料にも体にとって有害になる可能性のある種類が存在します。
しかも、よく使われている天然着色料が以外に毒性があったりするので、見ていきましょう。
よく使われている天然着色料
最近では消費者の健康意識が高まっているのをメーカー側も感じていて、ほとんどの食品に使われている着色料は天然のものになっています。
天然の着色料は数がなかなか多いので、よく使われているものをピックアップして紹介していきます。
アナトー色素
ベニノキ科ベニノキの種子から主に3種類の方法で抽出されて得られる赤い色素です。
- 温めた油脂で抽出する
- 有機溶剤で抽出し、その後溶剤だけを除去
- 加水分解(水と反応して起こる分解)
ラット(実験用白ネズミ)に対して体重1㎏あたり、アナトー色素を5g与えた実験では、死亡例はなく、解剖で異常は見られなかったようです。
急性毒性は弱いですが、神経細胞に関係するドーパミンーβーヒドロキシラーゼという酵素のはたらきを強く妨害することがわかっています。
危険性
- 一部酵素のはたらきを阻害
よく使われている食品
- ハム、ソーセージ
- チーズ
- 水産加工品
- マーガリン
など
カロチノイド色素(アナトー色素、パプリカ色素、βカロチン、カロテノイド、カロテノイド色素)
カロチノイド色素は上記のような様々な名称で分かれており、動植物に含まれる黄・だ橙・赤・紫色を示す総称です。
名称が様々あり統一されていないので、この表示では具体的な色素名がわかりません。
カロチノイド色素の多くは安全性に問題が無いと言われていますが、上記したアナトー色素のように多少問題のあるものあるので、完全に安全とは言い難いです。
このように曖昧な日本の食品表示が私は大嫌いです。
アントシアニン
紫色の着色料で、これは聞いたことのある人も多いと思います。
主に紫芋や紫山芋、ブドウの果皮から抽出されていて、どれも食品から抽出されたものなので、安全性に問題は無いです。
危険性
- 安全性が高い
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- 菓子類
など
ウコン色素(クルクミン、ターメリック)
ショウガ科ウコンの根茎の乾燥品を、温めたエチルアルコール、温めた油脂、または有機溶剤によって抽出して得られたのがウコン色素です。
ターメリック色素ともいい、クルクミンという黄色の色素です。
カレー粉の原料として使われており、これがカレーの色の元となっています。
「肝臓のはたらきを高める」ということで健康食品としても売られているので、「安全性に問題なし」と思いますが、ウコンから特定の色素成分を抽出した、つまり、「ウコン色素」として動物に与えると、毒性が出てしまうという実験結果が出ています。
急性毒性(その物質を摂取してからすぐに起こる毒性)が弱いながらあります。
マウスに対して体重1㎏あたりに対してウコン色素2gを口から与えると、その半数が死亡します。
他にも、マウスとラットにターメリック(ウコン色素)を0.2%、1%、5%含むエサを103週間(約2年)自由に食べさせた実験では、マウスの1%群で肝細胞腺腫(※腺腫:ポリープなどの良性腫瘍)あるいは肝細胞ガンの発生率が対照群に対して比べて明らかに増殖し、5%群では、下垂体(脳の一部)腫瘍が増加しました。
さらに5%群では、赤血球やヘモグロビン(赤血球中の酸素を運搬する物質)が減っていました。
この実験結果を見るとウコン色素が安全とは言い難いですね。
私はこの結果を見た限りだと、口に入れるのをためらってしまいます。
ただ、カレー粉に使われているウコンは、ウコンの根茎の乾燥品をそのまま粉にしたものなので色素をバランスよく含んでいて、人類の長い食経験の中で安全性が確かめられているので安心してください。
「そのままの形で摂取すると安全性に問題は無くても加工すると毒性が出る」というのは他の食品を考える上でも大事ですね。
ウコン色素は無理に黄色い色素だけを抽出し、それだけを凝縮させているので、動物に対して毒性が出てしまうのかもしれません。
ウコン色素を抽出する際に使われた溶剤が残留していて、それが毒性となっていることも考えられます。
危険性
- 急性毒性あり
- 動物実験に対して、発ガン性あり
よく使われている食品
- 農水産物加工品
- 食肉加工品
など
カラメル色素
カラメル色素にはいくつかの生成方法があります。
デンプンや糖類を単に熱処理して得られたもの(砂糖を熱し続けるとカラメルができますね)と、亜硫酸化合物やアンモニア化合物を加えて熱処理したものがあります。
毒性が強いのは言うまでもなく後者の方法によって作られたものです。
しかしパッケージの裏の表示では「カラメル」や「カラメル色素」としか表示されていないので、どのように作られたのか私たちには知ることができませんので、後者の方法によって作られたものと仮定して毒性を見ていきましょう。
過酷な実験ですが、ラットにカラメル色素を10%、20%含む飲料水を127日間(約4か月間)与えた実験では、便が黒くなり、弱い下痢が見られました。
ラットに10~25%のカラメル色素を含む飲料水を与えた実験では、胎児の着床数や新生児数が減り、脱毛が見られました。
人間に行われた実験でも、腸運動が活発になって便がゆるくなっています。
カラメル色素の中には細菌の遺伝子を突然変異させたり、染色体を切断させるものがあり、これは細胞のガン化に関係しています。
危険性
- 発ガン性の疑いあり
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- お菓子
- 醤油
- 佃煮
- 乳飲料(安いコーヒー牛乳など)
など
クチナシ色素
アカネ科クチナシの実から温水で抽出したのち、酵素を添加して分離することで得られ、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、クチナシ青色素があります。
ラットに体重1㎏あたりクチナシ黄色素5gを与えた実験では死亡例は見られず、解剖して調べても異常は見られませんでした。
しかし別のラットに同様に0.8~5gを口から与えた実験では、下痢を起こした他に、肝臓が出血し、それに伴う肝細胞の変性(性質が変わる事)と壊死が見られました。
他にも、ラットにクチナシ青色素を5%含むエサを13週間(約3ヶ月)与えた実験では、体重が減ったり、途中で死亡したりする例はなく、明らかな毒性は見られませんでしたが、細菌に対して突然変異を起こすことがわかっています。
クチナシ赤色素は、大量に細胞に作用させると染色体を切断することがわかっています。
染色体の切断や細胞の突然変異は細胞のガン化との関係性がありますので、注意が必要です。
危険性
- 少しの発ガン性の疑いあり
よく使われている食品
- お菓子
- 生ラーメン
- インスタントラーメン
- 冷菓
- ガム
- シロップ
コチニール色素
主に橙色や赤紫色への着色するのに使われていて、お酒を飲む人はわかると思いますが、「カンパリ」というイタリアのリキュールの着色に昔から使われていました。
南米のサボテンに寄生して生息している、カイガラムシ科のエンジムシという虫を乾燥させて、それをお湯または温めたエチルアルコールで抽出して得たものです。
主成分はカルミン酸という物質で、「カルミン酸」や「カルミン酸色素」と表示されていることもあります。
ラットに体重1㎏あたり5gのコチニール色素を強制的に口から与えても、死亡したものはなく、ラットの状態や臓器にも異常は見られませんでしたので、急性毒性はとても弱いです。
しかし、ラットにコチニール色素を3%含むエサを13週間(約2ヶ月)食べさせた実験では、中性脂肪やコレステロールが増えました。
この他、細菌の遺伝子を突然変異させることがわかっています。
危険性
- ラットへの実験では中性脂肪やコレステロールが増えた
- 細菌の遺伝子を突然変異させる
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- お菓子
- 冷菓
- 食肉製品
- ジャム
- トマト加工品
など
パプリカ色素(トウガラシ色素)
トウガラシの実から、加熱した油、エチルアルコールまたは溶剤で抽出して得られる赤い色素です。
辛み成分を取り除かれることもあります。
食品として使われているトウガラシから抽出した成分なので、安全性に問題は無いと言われています。
「トウガラシ色素」、「カロチノイド色素」とも表示されます。
危険性
- 安全性が高い
よく使われている食品
- お菓子
- 漬物
- ドレッシング
- インスタントラーメン
- ふりかけ
ビートレッド
名前の通り赤色の着色料で、「赤ビート」、「野菜色素」と表示されることもあります。
ビート(砂糖大根)という糖分を多く含んだ赤い根菜から搾ったもの、あるいは水やエチルアルコールなどで抽出して得られたものです。
ラットに体重1㎏あたり5gのビートレッドを口から与えた実験では、死亡例はなく、解剖でも異常は見られなかったので、急性毒性はほとんどありません。
ラットにビートレッドの主な色素であるベタニンを与えたり、皮膚に注射したところ、ガンは発生しませんでしたが、最近に作用させた実験では遺伝子に弱い突然変異が見られました。
危険性
- 安全性は高いが、細菌の遺伝子に弱い突然変異がみられる
よく使われている食品
- 菓子類
- 和洋菓子
- かき氷シロップ
- 冷菓
など
β-カロチン
β-カロチンは、名前は聞いたことあるという人は多いかと思いますが、ニンジン、トウガラシ、みかんなどに多く含まれるオレンジ色の色素成分で、卵黄、血液、乳などにも含まれています。
β-カロチンが人参から分離されたのは、1831年と200年近く前の話であり、のちに化学的に合成されるようになりました。
β-カロチンは微量に添加することで、鮮やかな色を出すことができます。
ただ、β-カロチンには使用条件があり、「昆布類、食肉、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、海苔類、豆類、野菜およびワカメ類」に使用してはいけません。
これは、鮮度や本来の色をごまかす目的で使用されるのを防ぐためです。
こういう条件は消費者からすると助かりますね。
β-カロチンには多くの別名があります。
見たことのあるものもあるかと思いますが、「カロチン、カロチン色素、カロチノイド、カロチノイド色素、カロテン、カロテン色素、カロテノイド、カロテノイド色素」と、とても多いです。
そして、この中のどれを表示しても良い事になっています。
統一してほしいものですね。
ラットや犬に、体重1㎏あたり1日に1gのβ-カロチンを100日間口から与えた実験では、毒性は見られませんでした。
急性毒性や慢性毒性は見られません。
人間にβ-カロチン60㎎を3か月間毎日、口から与えた実験では、1ヶ月後に血液中にβ-カロチンの量が増えましたが、ビタミンA(β-カロチンは体内でビタミンAに変化する)の量が変化することは無く、ビタミンA過剰症になることはありませんでした。
危険性
- 安全性は高い
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- 果汁飲料
- お菓子類
- チーズ
- バター
- アイスクリーム
など
ベニコウジ色素
カビの一種であるベニコウジ菌の培養物を乾燥・粉砕した後に、エチルアルコールまたはプロピレングリコールという有機溶剤を用いて抽出されたものです。
赤色と黄色の色素があります。
別名「モナスカス色素」といい、「紅麹」と表示されることも多いです。
いくつか動物実験が行われいますが、毒性を示す結果は出ていないようです。
危険性
- 安全性が高い
よく使われている食品
- 水産練り製品
- 畜産加工品
- あん類
- 魚肉
- 漬物
- 赤飯
など
ベニバナ色素(フラボノイド色素)
キク科紅花の花から水で抽出すると、サフロミンというフラボノイド系の物質を主成分とする黄色素が得られ、こに黄色素をさらに除去して弱アルカリで抽出すると、同じくフラボノイド系のカルタミンという物質を主成分とする赤色素がえられます。
ベニバナは日本では長い間化粧品や和菓子などに使われています。
ベニバナ黄色素をラットの体重1㎏あたり5gを強制的に口から与えた実験では、死亡例はなく、一般状態や解剖でも異常は見られませんでした。
急性毒性は心配することはありませんが、赤色素も黄色素も細菌の遺伝子を突然変異させる作用があります。
これは細胞のガン化と関係があるので、摂取し過ぎは避けたいです。
特徴
- 細菌の遺伝子を突然変異させる
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- 乳酸菌飲料
- 菓子類
- 麺類
- 漬物
など
ラック色素
聞きなれない人もいるかもしれませんが、パッケージの裏を見るとたまにみかけることがあります。
赤色の着色料で、東南アジアに生息するカイガラムシ科のラックカイガラムシが分泌する樹脂状物質から、水で抽出してえられたもので、ラッカイン酸ともいいます。
ラットにラック色素を混ぜたエサを食べさせた実験では、耳下腺(唾液腺の1つで、耳の前側の下部にある)の肥大と腎臓障害が見られたようです。
危険性
- ラットの実験では耳下腺の肥大と腎臓障害が起こった。
よく使われている食品
- 清涼飲料水
- キャンディー
- ゼリー
など
天然着色料でも安全とは限らない
天然着色料と聞くと、合成着色料よりも安全な気がしますが、いくら自然の物質から抽出したとはいえ、虫や花など本来食用でないものから抽出したものが本当に安全か?というと少し疑問が残りますね。
基本的には私たちが食べている食材から抽出された着色料の安全性は高いです。
しかし中には上記した「ウコン色素」のように、食材として使われているウコンから抽出して作られた着色料にもかかわらず、動物実験による毒性はかなり高いです。
普段口にしている食材も、人間の手が変に加わって加工されることでそれが毒性のあるものに変わってしまうのは、「人間が自然に逆らうとどうなるのか」ということを示しているような気がします。
この記事が食品選びの際の参考になれば嬉しいです。
あなたの健康を願っています。
引用元
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