腸にはたくさんの細菌が住んでおり、それらは腸内細菌と呼ばれています。
こちらの記事
で少し紹介したのですが、今回はそれら菌の総称、腸内フローラついて書いていきたいと思います。
腸内フローラとは
腸内フローラという言葉を聞いたことがあると思いますが、これは英語ではIntestinal=腸 Micro=細菌 Flora=花畑と呼ばれており、腸内にはたくさんの細菌がいて、それらはまるで様々な種類の花が咲き乱れる花畑のようだということでこのように呼ばれています。
現在ではさらに花だけで例えるだけではなく、この世の中のようにさらに多種多様な生物で構成されていると考えられるようになり、腸内マイクロビオータ(英語読みではバイオータ)Intestinal=腸 Micro=細菌 Biota=生物相と呼ばれるようになってきています。
ちなみに日本語では腸内細菌叢と呼ばれており、叢という字は「くさむら・群がり集まるもの」という意味があるので同じ意味になりますね。
腸内フローラは腸のどこを指しているのかというと、小腸の下にある回腸
のあたりから大腸にかけてで、人間の手で培養し、観察出来る菌だけで500~1000種、生きているのがわかっているが、現在の技術で培養できない菌を入れると5万種といわれており、それらの菌が約1000兆個以上生息しているといわれています。
そしてまだまだ解明されていない菌がたくさんあるんですね。
腸内の細菌を全部集めると重さは約2キロといわれており、私たちの本当の体重は-2キロ引いた体重になります笑
1000兆個という膨大な量の細菌が生きているので、役目を終えて死んでしまった菌の数も膨大です。
私たちが排泄する大便の80%が水分、残りの20%のうちの10%が腸内細菌、あとは食べかすと剥がれ落ちた腸粘膜で形成されています。
それだけたくさんの細菌が一人一人の人間の腸の中にいるわけで、誰一人として全く同じ腸内フローラをもつ人はいません。
これが、例えばからだに良いといわれている食物を摂ったとしても、人によって持ってる細菌の種類も数も違うので、人によって効果が違うわけです。
さらに腸内フローラの細菌の基本的な構成は、生後10ヶ月である程度決まってしまい、それからは一生大きく変わることは無いといわれています。
腸内フローラはどのように形成されていくのか?
私たちが生まれたばかりの頃の腸はどうなっていたのか?そして大人になる過程でどのように腸内フローラが形成されていくのか?
これはとても面白いのでぜひ知っていただきたいです。
私たち人間は母親の胎内にいるときは菌を持っていません。
この世に生まれ、生後1日目から空気を吸い、母乳を飲んだりと、様々な細菌と接触することによって少しづつ腸内に菌を増やしていきます。
生後三日もたてば母乳やミルクから善玉菌のビフィズス菌やラクトバチルス菌などが一気に増加します。
生後一週間では、乳児の腸内はビフィズス菌で満たされます。
粉ミルクなどよりも母親からの母乳の方が、母親からの免疫物質を受け取ることができ、ビフィズス菌の量が多いこともわかっているそうです。
さらに母親と触れ合うことによって、母親の常在菌を取り込むことができ、それらが赤ちゃんの腸内細菌の一部になっていきます。
出産直後の赤ちゃんとお母さんの肌を合わせるカンガルーケアは、母親のリラックス効果と、赤ちゃんは菌を母親からもらうという意味でもとても理にかなっていますね。
母親の菌は、赤ちゃんへの一番最初の贈り物ですね。
両親とのスキンシップや外部の人と触れ合うことは、赤ちゃんにとって腸内細菌を獲得するという意味でとても大事であり、異物に対する抵抗力を身につけるためにもとても重要です。
幼児はなぜ何でも舐めたがるのか
生後しばらくたつと赤ちゃんは自分の手足から舐めはじめて、それからなんでも近くにあるものを口に入れてベロベロ舐めるようになります。
さらにハイハイができるようになって自分で動けるようになると、あらゆるものを口の中にいれるようになります。
この時に両親は「ばい菌を口にしてしまうのでは・・・」と思うかもしれませんが、よい菌、悪い菌、様々な菌にこの時期に接し、土壌菌を取り込むことによって、免疫を獲得していくのです。
先ほども述べましたが、人の腸内細菌は生後10ヶ月頃にはある程度決まってしまい、その時に決まった腸内細菌の種類や組成はそれから大きく変わることはありません。
つまり、それまでの時期にどれだけのたくさんの菌と触れ、獲得したかが赤ちゃんの免疫の強さになるので、なんでも消毒して、清潔な部屋に過ごさせるといった赤ちゃんにとって過保護過ぎる育児は、完全に逆効果になります。
今の時代たくさんの人が何らかのアレルギーや。アトピー性皮膚炎をもっています。
それらは今の行き過ぎた消毒や清潔過ぎる環境で赤ちゃんが育つことによって、必要な免疫が得られないことによって増えているとされています。
ある研究では、家畜や動物に触れた経験の多い子供は、アレルギーが発症しにくくなるとわかったそうです。
このことから、アレルギーは遺伝ではなく、環境によって起こると考えている学者の人たちもいます。
動物の腸内細菌
動物と腸内細菌について少し書いてみたいと思います。
例えばコアラやパンダは、コアラの主食はユーカリの葉、パンダは笹ですが、両方とも毒があり、コアラもパンダも赤ちゃんは消化することができません。
そこでコアラやパンダの赤ちゃんは母親の糞から腸内細菌を獲得してそうして得た腸内細菌によって消化できるようになるのです。
地鶏とブロイラー(人間の手により徹底的に管理された鶏)を比べても、飼料で育った鶏よりも、地面をつついてエサを食べている地鶏の方が土壌菌を豊富に摂取しており、ブロイラーの鶏よりも栄養が豊富で、細菌を得ていることによって腸内フローラのバランスがよく、卵にも肉にも栄養が豊富です。
あらゆる動物は自然環境や糞、土壌からその動物にとって生きるために必要な菌を獲得して成長していきます。
まとめ
私たち生物は様々な細菌など微生物と共存して生きています。
あらゆる生物がそれぞれに必要な菌を獲得していき、腸内フローラを豊かにしていきます。
例え目に見えない細菌だとしても、確実に私たちのからだの中に住んでおり、それぞれが色々な役割を持って生きているので、感謝し、大切にし、健康でいるためにもうまく共存していけるように努めましょう。
あなたの健康を願っています。