「酵素」(英語ではenzyme)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
一時期酵素ブームが来て以来、聞いたことがある人も多いかと思います。
アメリカの酵素研究の第一人者であるエドワード・ハウエル博士は、
「からだの中にある酵素が尽きた時が寿命が尽きる時」
と述べており、逆にいえば酵素の事を理解してうまく付き合っていけば長生きができる可能性があるということです。
長くなってしまうと思うので何回かに分けて書いていきたいと思います。
酵素とは?
日本の酵素栄養学の第一人者である鶴見隆史氏は、人間に必要な栄養素を九つに定義しており、炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維の六大栄養素に、水とファイトケミカル、(野菜や果物の皮などに多く含まれている抗酸化物質であり、カロテノイドやポリフェノールなどがある)それに酵素を加えています。
現在2万種類以上の酵素がからだの中にあるといわれており、酵素は基本的に「タンパク質を主成分としたからだの中で起こる化学反応を触媒する物質」と定義されています。
酵素の大きさは種類によってだいぶ異なるようですが、5~20ナノメートル(1ナノメートルが1ミリの100万分の1)だそうで顕微鏡でも観察できない大きさです。
形は球状で、常に動き回って形を頻繁に変え、基質(酵素が作用する相手物質)と衝突を繰り返し、1マイクロ(100万分の1)秒という超高速の速度で反応しています。
これを「分子のダンス」といい、1分間に合成・分解する分子の平均数は3600万個で、中には1分間に4億回も化学反応をする酵素もあるそうです。
もの凄く小さな物質がこのようなスピードで絶えず化学反応をしているなんて全くイメージできませんが、人体は知れば知るほど神秘的です。
44~50度ぐらいの温度がもっとも酵素が活性化し、人間の体内では38~40度がもっとも活性化する温度のようです。
病気になった時に体温が上がるのは、酵素を活性化させてその病気を治そうとするからだの反応です。
さらに酵素はpH(ピーエイチ)という水溶液の性質(酸性やアルカリ性など)の濃度にも影響されて活性化・不活性化します。
酵素のはたらき
人間のからだは百兆個の細胞でできているといわれており、 ひとつひとつの細胞が化学反応を行っています。
酵素はこの細胞の反応に触媒(自身とは別の物質の化学反応を促進させ、触媒自体は変わらない)としてはたらいています。
カップルの仲人をイメージしてもらうとわかりやすいです。
酵素は触媒としてはたらくために穴のようなものがあり、そこに他の物質をくっつけて触媒として合成・分解をしています。
あらゆる生物の生命活動には酵素のはたらきがあり、植物では芽の発芽や紅葉、人間でいえば食べる・話す・聞く、あくびをしたりするなど全ての行動に酵素が関わっており、その他の栄養素を消化して吸収したりするのも酵素のはたらきによるものなので、いかに酵素が大事かわかっていただけると思います。
酵素をわかりやすく説明する為に人間を家に例えると、三大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)は家の材料で、良質な材料程いい家を作れるのと同じで、ファストフードや添加物まみれの食べ物など質の悪い食べ物ばかり食べていると健康的なからだは作られません。
食べ物の質にここだわることがいかに大事かがわかりますね。
話を戻しますが、材料があってもそれを梁や柱などの建築用の材料にしたり、その材料を使って家を組み立てる大工さんがいなくてはいけませんね。
生活をしていると不意に扉が壊れたり壁に穴が空いたり(怪我や病気)もしますね。
それらを修理するのも酵素の役割になります。
だいぶ酵素がイメージしやすくなってきたのではないでしょうか。
はたらく酵素の種類
体内ではたらく酵素は大きく2種類にわかれており、一つは食べ物を消化する際に使われる「消化酵素」、もう一方は生命活動全般で使われる「代謝酵素」があります。
様々な種類の酵素が毎日からだのそれぞれの細胞の中で作られており、細胞核にあるDNAがどの酵素を作るかを設計し、遺伝子によって作られます。
消化酵素は消化器官の細胞内で作られます。
先ほど紹介したハウエル博士は、この2種類のはたらきをする酵素を合わせて「潜在酵素」と呼んでいます。
植物や動物など他の全ての生物にも酵素が含まれていますが、これらを私たちが食べることによって摂取する酵素を」「食物酵素」といい、「体外酵素」とも呼ばれます。
酵素の大きな特徴
酵素は基質と衝突をして化学反応をしていると書きましたが、もう少し詳しく書いていきます。
炭水化物であるデンプンは、唾液に含まれている「アミラーゼ」という消化酵素の基質になります。
タンパク質は「プロテアーゼ」、脂質は「リパーゼ」という酵素で分解され、炭水化物を分解するアミラーゼではタンパク質を分解することができません。
それぞれの物質(基質)ごとに対応する専門の消化酵素があり、この特徴を「基質特異性」といいます。
つまり、ひとつの酵素が触媒としてはたらける化学反応は通常1種類のみということです。
酵素には基質がはまるための穴のようなものがあると述べましたが、からだの中に2万種類以上あるといわれている酵素の穴の形は一つ一つ違います。
つまり、2万種以上という数の酵素と反応できる基質はそれぞれ違うのです。
酵素はもちろん同じ酵素を使い回しているわけではなく、 その酵素が基質と何度も反応をすると、基質がはまるための穴が潰れてしまい、酵素としてはたらけなくなってしまいます。
早くて数時間、長くて数十日で消滅すると考えられており、はたらけなくなってしまった酵素はからだから排出されるか、タンパク質で構成されている酵素はアミノ酸に分解されて新しい酵素やタンパク質の原料になります。
からだは使えなくなった酵素を分解し、再利用して新しい酵素を作り出し、常に入れ替えているのです。
しかしこの酵素を製造する能力は20歳を境に年齢が上がるにつれてどんどん落ちていき、40歳を超えると急激に落ちるそうです。
若いころは無茶できても、40過ぎからは酵素の生産能力が落ちるため、疲れがなかなか取れず、無茶をすると色々なからだの問題が出てくるのです。
酵素の名前には基本「アーゼ」という接尾語が付けられており、その触媒の化学反応によって名前が付けられています。
からだは、食物がからだに入ってくるとその食物を分解するのに必要な種類の酵素を必要な分だけ分泌しており、これを「適応分泌の法則」といいます。
タンパク質の分解酵素であるプロテアーゼのひとつ、「ペプシン」を例に挙げて説明します。
酵素の多くも不活性の前駆体のような形状の物質が作られ、それを「プロ酵素」といいます。
ペプシンの前駆体は「ペプシノーゲン」といい胃の粘膜から分泌されます。
胃に食物が入ってくるとそれを溶かすために胃酸(塩酸)が多く分泌されて胃のpH が下降します。
この記事の最初の方で「酵素はpHの影響によっても活性化する」と書いたように、この時に前駆体であるペプシノーゲンはタンパク質分解酵素であるペプシンに変わります。
このペプシンと胃酸によって胃の中のタンパク質を分解していきます。
この適応分泌の法則に則って、からだに食べ物が入ってくると各栄養素に応じてからだは酵素を作り出して消化をしているのです。
タンパク質を例に挙げたのもう少し説明すると、タンパク質を分解する酵素であるプロテアーゼ酵素は9000種類以上あります。
ひとりの人間の細胞を作るのに1万3000種類の酵素が使われているのですが、タンパク質分解酵素だけでその半分以上を占めています。
タンパク質はアミノ酸に分解されてから、からだの骨格の形成や色々なからだの中の化学物質の材料になるので、この酵素の種類からも、タンパク質はからだにとってとても重要な栄養素だということがわかりますね。
まとめ
酵素は私たちが生きて行動をする度に使われます。
今私が考えながらキーボードを叩いている間にも考える事にも指を動かすことにも酵素が使われているのです。
そう考えると酵素が無くなってしまったら死んでしまうのも納得できます。
酵素については長くなってしまうので、また別の記事で続きを書きたいと思います。
あなたの健康を願っています。